来 歴


私たちの未来のために


彼は異邦人と呼ばれ
枯渇の冬にも伸びやまぬ強靭な根
はてしないどんらんな存在である
たつた一言で世界を震撼させる彼の腕前
だが今の世界は暗く
私たちの未来だけが巨大な青空を背負つているのだ
彼は異邦人と呼ばれ
世界は彼に対して過酷であり
しかも私が近づいて行けば
私たちの間が辛うじて無事であることを証すために
彼は幾足も遠のいて見せたりする
和解とは手をとつて
互の無事をほめあうことではない
彼は先を行き私はあとにのこる
走つても十年歩いても十年
しかし彼は走るのだ
薔薇色の少女の親密な目くばせや
それは母親の責苦に似た愛などの
すべてをしりめにかけて行われる
いつたい何もののしわざであろうか
わずかに異なる自由を得んがために
彼をしてこのような罪へかりたててやまないのは
いつまで世界に先行していなければならないのか
異邦人と呼ばれ
この乾いた木の葉のような魂は
十年後の方で
彼の夏は枯れつくし
世界には彼の罪が華やかに開くだろう
やがて不慮の悔いとなつて現れる
壁の幼い猥画のように
魂は不慮の罪
はるかな年を経て実にみごとにみのるのだ

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